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サンディエゴ木村です。音楽とゲームが好きです。カリスマブロガーを目指します

サンキム書評#4 『木漏れ日に泳ぐ魚』恩田陸

四回目の今回は恩田陸さんの『木漏れ日に泳ぐ魚』、なんだかんだ読んでなかったシリーズの一つを書く。文藝春秋の社員インタビューみたいなのでお勧めの本として見つけたのがきっかけだった気がする。それすらも曖昧なくらい昔に買ったんだけど、バチ面白かった。1日で一気に読むくらい。最近は大学の授業に合わせて読んだりしてたから、1日でグワーって一気に読んだのは久しぶりだった。

 

あらすじなんだけどネタバレを避けながら書くのがなかなか難しい。舞台はアパートの一室で二人の男女が別れ話をするところから始まる。回想を除いては登場人物はその二人だけで、その二人が交互に語り手になってストーリーが進んでいく形になる。

 

もうこれ以上書けね〜〜〜!読め読め!書評に書いてはいけない言葉第一位、みたいなことを言うけど、読めばわかる。最初の読み始めは「男女の別れ話か〜」って感じで読み始めるんだけど、違和感というか黒い影みたいなものが見えてきて、これが物語を一変させる。恋愛小説ではあるんだけど、ほぼサスペンスみたいな。読み終わった頃には「うわー!!」ってなる。

 

言いてえ〜

 

また、この二人はどちらも頭の切れる人物として描かれているんだけど、二人の回想はあくまで妄想の域を出ずに展開されている。この感じは前に言ったカズオ・イシグロの手法と共通していて、その手法も不気味で面白かった。読書というものは、そういう風に自分の中に観点を増やす、というか違った視点を持てるようになるというのが醍醐味の一つなんだと感じた。本を読まなくても、自分でそれらを経験できる人は本を読む必要はないと思うけど、自分みたいに矮小な人間は本を読んで行かなきゃいけないんだな。多分。

 

一つこの本のテーマを挙げるとするなら「真実の残酷さ」とかになるかなと思う。知らない方がよかったものはたくさんあるというのは今更言及するまでもないことだけど、この真実というのが時に修復不可能なほどの傷を与えてしまうことがあるんだ、というのがこの本のテーマの一つなのかな。それでも人は得てして真実を知りたがるし、究明しなければ気が済まない。でも真実を知りたくても触れない方が良いものには触れない、というのが「大人になる」ということなのかなと思った。

 

木洩れ日に泳ぐ魚 (文春文庫)

木洩れ日に泳ぐ魚 (文春文庫)

  • 作者:恩田 陸
  • 発売日: 2010/11/10
  • メディア: 文庫
 

 

 書きたいものがたまってきたのでいい加減書く